#1768 天才と狂気 - 藤沢秀行名誉棋聖逝く
訃報:名誉棋聖の藤沢秀行さん 83歳 - 毎日jp(毎日新聞)
重厚な棋風で棋聖戦6連覇を果たし、破天荒な生き方でも知られた囲碁棋士の藤沢秀行(ふじさわ・ひでゆき)さんが8日、死去した。83歳だった。
世間を騒がせることの多い棋士だった。酒、煙草、×××、などやりたい放題、この人に比べれば草なぎ剛
など「ひよっこ」である。米長邦雄でさえ遠く及ばない。
メチャクチャな行動が日常茶飯事だから、もう、周りの人間が慣れてしまった。「タイトル戦に向けてお酒を断つ」というだけで、何か立派なことをしているかのような錯覚に陥る。
- 黒いキャンバスに描いた白 - 藤沢秀行の断酒
- 白いキャンバスに描いた黒 - 草なぎ剛の泥酔
なんとも皮肉な好対照であるが、そういうものである。
藤沢秀行がすごいのは、数々の問題行動がありながら、囲碁のプロ棋士として立派な棋譜と成績を残した点だろう。度を超えた手厚さで「異常感覚」と呼ばれる希有な才能だった。「手厚い棋風」を比喩的に言えば「健康に気をつけ、堅牢な家を建て、日々をまじめに暮らす」といった趣だ。
- 破滅型の日常生活
- 質実剛健の盤上
これも好対照。
現役時代、ライバルとして競い合った二十三世本因坊坂田栄寿さんの話
秀行さんは碁に実に熱心で、研究心旺盛だった。対戦成績は私の方が良かったが、才能は私よりあったと思う。数少ない昔かたぎの棋士の一人で、秀行さんのような棋士はもう二度と出ないでしょう。残念です。
時々「棋譜を並べるなら誰がいい?」という問いがあるが、ひとつの答えとして「坂田栄男と藤沢秀行を同時に並べる」というのが考えられる。
- 坂田栄男 - 家は建っていればいい。とにかく金を稼ぐ。
- 藤沢秀行 - 金は必要最小限でいい。とにかく家を頑丈に。
時代を経た今でも「厚み派と実利派」の両極は、藤沢秀行と坂田栄男である。
- 坂田栄男より速ければそれは「打ちすぎ」
- 藤沢秀行より遅ければそれは「緩着」
と考えて差し支えない。
バランスのとれたひとつの棋譜を並べるより、両極端な棋譜を並べる方が分かりやすい。
藤沢秀行のような棋士はもう出現しない。盤外の破天荒な生き方はともかく、盤上に残した唯一無二の軌跡は今後も貴重なお手本であり続けるだろう。
関連
囲碁・棋聖6連覇、藤沢秀行さんが死去 : 文化 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
20代後半から競輪にのめり込み、30歳を過ぎてからは酒を愛し、酒のにおいを残して対局に臨むなど、多くの逸話を残した。不動産業に手を出したり、囲碁ツアーなども企画したりしたが、赤字で億単位の借金を抱え、最高の賞金額である棋聖戦に勝つことが“最後の勝負手”ともいわれた。防衛戦の1か月前から断酒して七番勝負に臨んだ執念は、語り草となった。
昨年、足の骨折で2度入院。一度は自宅に戻ったが、ものを食べる際に細菌などが誤って気管に入り込む誤嚥性肺炎を起こし、今年3月から聖路加国際病院に入院していた。延命的な治療を拒否し、「碁も十分に打った。がんも3度やっつけた。やりたいように生きてきた。死ぬまでは生きる。死んだように生きたくはない」と話していた。本人の希望で、遺骨は広島県・厳島神社の海に散骨されるという。
遺骨は広島県・厳島神社の海に散骨される
という部分にすごく共感した。人が死んだら自然に帰るのが一番だ。
NIKKEI NET(日経ネット):社会ニュース-内外の事件・事故や社会問題から話題のニュースまで
棋聖戦では77年から6連覇。91年には史上最高齢の66歳で王座位を獲得した。タイトル獲得数は23。
98年に現役引退。99年、独自の免状発行を表明するなどしたため、日本棋院から除名処分を受けたが、2003年に復帰した。(10:47)
奇人変人列伝で本当にすごいのは、本人ではなく奥さんである。
変人同士、意気投合。
早朝の電話