#1904 浅田真央の涙 - バンクーバー冬季五輪 女子フィギュアスケート
浅田真央が銀メダルで泣いていた。悔しくて泣いていたというところに人間的な深化を感じる。
以前の彼女なら、負けても「楽しかった」「次頑張る」という前向きなコメントを出していただろう。「世の中は楽しさに満ちている」ということを無邪気に信じているような女の子だった。
「楽しいから滑ってます」
長洲未来(アメリカ)がそんな感じだった。4年前の浅田真央がそうであったように失敗に対する恐れが全くない。見ている方もリラックスできる。良い意味で緊張感がないから、のびのびと滑って、ますます良い方向に行く。しかし、3位には「地元開催+母親の急死を乗り越えて出場」というロシェット(カナダ)がいた。諸事情により長洲未来には低めの点数が出た。それでも飛び上がって喜んでいた姿が印象的だ。
今回、浅田真央は目標に対して明らかに「失敗」だった。トリプルアクセルは2回とも(SPを合わせると3回も)成功させたが、しなくてもいいところでミスをしてしまった。「できるはずのことができなかった」というのが一番悔やまれる。
- トリプルアクセルで派手に転ぶ。
- 完璧に演技して点数が届かない。
このどちらかであったなら、もっと清々しい気持ちだったに違いない。
世の中には「必ず良いことを見つけて終わる」という、よく言えばポジティブ思考の、悪く言えば「おめでたい」人たちがたくさんいて、「銀メダルでも、おめでとうございます」とか「負けても(○○だから)良かった」とか言いたがるが、本当にそれでいいのか。それらの台詞は慰めているつもりで「銀メダルで良かった」「そんなに期待していなかった」という意味にとれてしまう。
「金メダル」「完璧な演技」を強く希求したがゆえの「涙」だったのだから、「残念」の一言に尽きるだろう。
ハッピーエンド症候群
「負けても、よかった」と言わずにはいられない人たち、必ず良いことを見つけて終わる人たちはまさに『ハッピーエンド症候群』である。