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hidew 2005.06.02

#506 『婦人公論』張栩×小林泉美

『婦人公論』張栩×小林泉美

http://d.hatena.ne.jp/fujinkoron/20050529/p1

 写真撮影の際、碁盤を挟んだお2人に、カメラマンの熊谷聖司さんが「ちょっと打ってみてもらえますか」と言った。別の構図を撮るために、軽い気持ちで言ったのだと思う。しかし、彼等が交互にと或る棋譜を並べ始めると、熊谷さんは写真機を構えたままシャッターを切るのを忘れてしまっていた。横の私もそれに気づかず、一緒に息を呑んでいた。

 碁石のたてる澄んだ音が幽玄の間に響くたび、侵しがたい空気がピンと張りつめていく。その光景はあまりにも美しく、だいぶ経ってから我に返った熊谷さんが「あ、えーと、すいません、ちょっと手を止めていただけますか」と言うまで、私たちは心がどこかへ連れ去られていた。「碁盤の中に宇宙がある」という大仰な言葉を、ちょっと信じる気持ちになった。きっと彼等は、「神様がつくったゲーム」と呼ばれる囲碁の、その神様から祝福された2人なのだ。

いろいろなブログ経由で知りましたが、『婦人公論』という雑誌に「張栩×小林泉美のインタビュー」が掲載されています。そして上の文章はインタビュアーが裏話をブログに記したものです。

心の琴線に触れる名文だと思います。この方は碁のルールをほとんど知らないにも関わらず、碁を直感的に理解し、それを言葉として紡ぎ出しています。折しも「新聞囲碁欄の観戦記」が話題になっていますが、観戦記に求められるのはこういうセンスなのだと思いました。

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