#1897 張栩『勝利は10%から積み上げる』
プロ棋士のタイプは大きく藤沢秀行派と坂田栄男派の2つに分けられる。#1768 前者は囲碁を「芸道」と捉え、後者は囲碁を「勝負」と捉える。
張栩は「芸道」を語らず「勝負」を語る。強烈な「坂田派」である。
#本の装丁(写真など)もなんとなく坂田栄男や趙治勲を意識しているような気がする。
これほど共感できる勝負論・囲碁論には出会ったことがない。
棋書オールタイムベストテン
の5位くらいに入れておこう。
私は「帯状疱疹」「煙草嫌い」に関して同じ経験があるので驚いた。単なる煙草嫌いというだけではなくて「真冬の対局中、窓を開けた」というところまで同じなのだ。そういえば以前、ある人から「張栩に似てますね」と言われたことがある。容姿が似ていると性格や考え方も似る* のかもしれない。
書かれている内容の多くはどこかで聞いたことがある。坂田栄男、趙治勲、大山康晴、大竹英雄、羽生善治、野村克也、ストイコビッチ、イチロー …。勝負を極めた人が到達する場所というのはだいたい同じだ。
本書の内容は先達の勝負論を蒸留したようなものだろう。ただ、同じウイスキーでも熟成される樽が違えば風味が違う。
張栩の勝負論は、現実的で、自然体で、クセがない、それでいて陳腐ではない。アマチュアの人でも実践できる平易な考え方が具体的に書かれている。自身が「当たり前のことを積み重ねて強くなる」ということの体現者であり、説得力がある。
つづく
「三冊屋」桜井章一・大山康晴・張栩
このチョイスは絶妙だ。
一冊目に麻雀の桜井章一を持ってくるところがなんとも言えない。桜井章一は「20年間無敗の雀鬼」なんてキャッチコピーがついているから、とんでもないイカサマ師に思ってしまうのだけど、本ではすごくいいことを書いている。『勝つ技術』ではなく『負けない技術』と言っているところが重要なポイント。分かっていない人 は「勝つ」と言ってしまう。
大山康晴『勝負のこころ』は勝負論の古典的名著。