#1882 ヨダログ(依田紀基)「これだけは言わせて下さい」
坂田栄男、趙治勲、依田紀基。この人たちには「発言のブレーキ」が無い。というと語弊があるが、とても正直な人たちである。嘘をついたり、隠したり、ということを全くしない。棋界は全体的にそういう人が多い傾向にあるが、ここに挙げた3名は正直さに加えて、少年のような茶目っ気を持っていて、言動がいちいち面白い。そんな依田紀基プロが、最近ブログを始めた。
今月の5日にプロペア碁を打った。僕のパートナーは兆乾初段。まだ十代の可憐なお嬢さんである。対戦相手は趙治勲先生と青木喜久代さんのペア。
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なぜここで青木さんは投了しなかったのか?
大棋士趙治勲先生を差し置いて、自分が投了の意思表示をすることが僭越だと思ったに違いない ..
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どんな局面でも最善手を打ちたい .. この後も僕の予想通りに進み、完全に鍋に入った。茶碗と箸の世界である。
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兆乾さんはあまりの緊張状態から茶碗と箸を落としてしまった。その手を見た瞬間、僕は思わずのけぞった。
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勝負がついたあとも、僕は投げずに打った。なぜかと言えば、すぐ投げるのは、兆乾さんが、かわいそうな気がしたし、なにより兆乾さんの打った手の意味と痕跡を盤上に残してやりたかったからである。ここで趙先生が、「まだ打つの?投げてくるかと思った」と言い放ってきた。
この話を書きたくて、ブログを始めたのではないかと思う。
「どう打っても勝ち」の場面から逆転負けするのは、全くノーチャンスの完敗よりはるかに悔しい。自分たちは「クソ粘り」をしておいて、立場が逆転した途端に「まだ打つの?」と悪態をつく対戦相手、「オマエが言うか!」とツッコミたくなる気持ちもよく分かる。
これらのトホホ劇場はアマチュアではたまに見るが、ペア碁とはいえ、トッププロ同士でこういう事件が起きるのは珍しい。しかも普通はプロが自ら書かない内容である。さすがに依田紀基というエンターテイナーは違う。
当事者としては悲劇的で不愉快な事件も、ロングショットで見れば喜劇だ(チャップリン名言のパクリ)。依田紀基の描写からも「引いて見たら面白いでしょ」という雰囲気が伝わってくる。お笑い芸人が言う「おいしい」という状況である。趙治勲の暴言もなんとなく「わざとボケている」ような気がしないでもない。この事件は「坂田栄男的全部ぶっちゃける」芸風を継承するお二方による共作のコントではなかろうか。
ここで僕が手を上げて審判を呼んで「相手のペアが相談しています!」と言ったらどうなったかなあ?
その展開も面白いと思う。「そんなところに突っ込むか!?」というブラックマヨネーズ的「ズレツッコミ」
お笑い要素を考えなかったとしても「プロ棋士の対局にお遊び・馴れ合いはない。勝つことが全てだ!」という強烈なアピールになる。アマチュア相手の指導碁を全力で打った挙げ句「負け惜しみ」まで言ってしまう坂田栄男なら、この場面でも本気で手を上げただろう。
趙治勲の悪ふざけがすぎるのはいつものことだが(藤沢秀行の奇行と同じで今更本気で怒るようなことではない)、それを面白おかしく紹介し、ショックを受けているであろう兆乾(女流プロ)
にむけて「深いイイ話」まで書いてしまうのはお見事である。
下手こいた人に向かって「
おめでとう
」の一言。これを嫌みではなく励ましとして言っているところがなかなか深い。
関連
依田 紀基(よだ のりもと、1966年2月11日 - )。北海道岩見沢市出身。安藤武夫七段門下。名人4期、碁聖6期、NHK杯優勝5回などタイトル獲得数35。左利き。
- 棋風は柔軟で優れた大局観を持ち、捨て石の名手ともされる。
- 179cm90kgと大柄で、髪を短く刈り込んだいかつい風貌。体型が多少変わっても融通が利くことから、近年は公私ともに和服を着用することが多い。
依田紀基コラム連載中止のお知らせ (2007.11.20)
(via. http://blog.goo.ne.jp/kkm3/e .. )
約一年前にはこんなことがあったらしい。
依田プロが何を書いていたかは全く知らないが、たぶん「囲碁と無関係の話が多い」という程度の理由だと思う。
有料会員向けだとクレーム対応が難しいから、無料で提供すればよかった。結局、棋士はみんな gooブログに逃げてしまった。gooブログはシステム的にそんなに良くないのだけど、日本棋院で検閲を受けて書くよりはましである。