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hidew 2009.12.13

#1872 ETV特集「迷走 碁打ち・藤沢秀行という生き方」

2009年5月8日、囲碁の名誉棋聖・藤沢秀行が亡くなった。83歳だった。
華麗で重厚、無類の強さを誇った天才棋士。酒・女・ギャンブル、借金地獄をさまよって、最後の無頼派と呼ばれた男。秀行はなぜ無頼に走ったのか?
なぜ碁の道を極めようともがきあえいだのか?
藤沢の碁の世界と波乱に富んだ人生を、名勝負を闘ったライバル棋士やまな弟子、家族たちの証言と、映画監督の故・相米慎二が残した秘蔵映像でつづっていく。
【出演】棋士(故人)…藤沢秀行,藤沢秀行夫人…藤沢モト,映画監督(故人)…相米慎二,棋士…白鳥澄子,棋士…曲励起,棋士…武宮正樹,棋士…林海峰,棋士…高尾紳路,棋士…常昊,書家…柳田泰山ほか

関連記事

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hidew 2009.12.15 [1]

坂田栄男「秀行と私は仲が悪いんだよ。」

  • 坂田栄男「秀行のちょうちんを持つような番組なんか出たくないんだけどね。秀行は無頼派の棋士というけど、嫌いなの 僕は… 正反対だよ」
  • 坂田先生はなんで秀行さんの偲ぶ会に参加しようと思ったんですか。
  • 坂田栄男「新聞で見たから。 知らなかった おれ。通知ももらわないもん。おれがくるとは思わなかったもんな向こうは。最期だから行ったんだ。」
  • どうして行こうと思ったんですか。(なぜかしつこく突っ込むインタビュアー)
  • 坂田栄男「お別れだから。お別れだ。最期の。」

  • (本因坊・坂田 VS 名人・藤沢)
  • 坂田栄男「勝った方が即日本一だよ。しかも秀行と私は仲が悪いんだよ。 だから両方 舌戦の、今じゃ想像できないくらいの、お互いに大勝負だったんだよ。」
  • 坂田栄男「三連敗したときは大ショックだよ。このままじゃ勝ち目はないと思ってね。それからが本当に命を削ったね。」


1872.sgf

第2期・名人戦・第6局
黒:藤沢秀行
白:坂田栄男
1963-09-20,21

  • 普通は定刻間際に時間を使って考えていた方が「封じ手」を受け持つという暗黙のルールがある。しかし、坂田本因坊は白52手目を打つ。自分を「封じ手」番にしようとしていることに怒りを感じた 藤沢秀行名人 は 黒53 を打つ。ところが本因坊はすぐ 54. ここで一言、名人が「頭にきた」と言って腕組みした時、立会人が定刻を告げたのである。
  • 藤沢秀行「もう言いたくないね。腹が立つことは山ほどある。」
  • 坂田栄男「あれも勝負のうちだと思って… 気合い負けしちゃいかんと思うから。それでああいうバカなことをやったんだ」
  • 藤沢秀行「おれみたいに神経がピリピリしているやつは損なんだよね。図太いやつはそういうの乗らないでしょ」
  • 坂田栄男「考えてみるとね あの勝負でね。やっぱり寿命縮めたね。心身ともにもうガックリしちゃった。」
  • 勝ったのに?
  • 坂田栄男「勝っても」
  • 坂田栄男「だから おしまいなんだ。あれが最後なんだよ。ああいう勝負は。僕と秀行で終わりなの!」

やはり坂田先生は最高だ。

秀行のちょうちんを持つような番組なんか出たくないとか、(偲ぶ会出席は)新聞で見たからというまさかの憎まれ口。

いささかも衰えていない。

hidew 2009.12.15 [2]

藤沢秀行「自画自賛の一手」(武宮正樹解説)


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  • 小野田千代太郎
  • 藤沢秀行
  • 1942-05-05
hidew 2009.12.15 [3]

曲励起「碁だけは正攻法なんですよ」

  • 子供の頃秀行さんの碁はどんな感じだったんですか。
  • 曲励起「碁だけは正攻法なんですよ。常識的なの。慎重な人なんですよ。だいたいキチンキチンと打つ人でしたね。」
hidew 2009.12.15 [4]

小西泰三「実像はすごく神経質で、虚像をつくり上げることで実像を保つ」

  • 小西泰三「『おれは天下の秀行だ』と怒鳴り散らして公の場をめちゃくちゃにしてしまうことがいっぱいあったわけ、みっともないと言えばみっともないけど、そういうことでもやらないと自分の形がないのよ」
  • 藤沢秀行の形ってなんですか。
  • 小西泰三「虚像かもしれないですよ。実像はすごく神経質で、虚像をつくり上げることで実像を保っていくようなことが本人の意識の中にあったんじゃないか」」
hidew 2009.12.15 [5]

大竹英雄「秀行先生のような人は二度と出てもらったら困る」

  • 大竹英雄「秀行先生が亡くなられた朝、すごい雷が鳴ったよね。その後きれいな虹が出てね。そしたら電話(訃報)があって。あの雷は秀行先生がお別れに声出したのかなぁ」
  • 藤沢秀行みたいな碁打ちは囲碁界にまた?
  • 大竹英雄「いやー、それはねー、一代でいいですよ。はた迷惑で。二度と出てもらったら困るし。一代だからいいんですよ。対処できないもんね。

藤沢秀行 VS 加藤正夫 「大石撲殺の局」
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hidew 2009.12.15 [6]

林海峰「違う世界を覗かせてもらった」

碁を打つ人なら分かる吃驚仰天の4手。
1872-3.sgf

受験生で例えると「大学入試の一週間前に4日ほど座禅を組んで瞑想してました」というくらいすごい。やる気があるのかないのかさっぱり分からない。

  • 林さんにとって藤沢秀行って、なんですか。
  • 林海峰「違う世界を覗かせてもらったような感じですね」
hidew 2009.12.15 [7]

藤沢一就「そんな恐ろしい人は出なくてもいい」

  • この子供教室から第二の藤沢秀行が出るんでしょうか?
  • 藤沢一就(新宿囲碁教室)「ハハハ、そんな恐ろしい人は出なくてもいいんですけど。 世界で戦える子供たちをなんとか育てたいなと思っています。」

この人は羽生善治に雰囲気が似ていると思った。

hidew 2009.12.15 [8]

妻モト「怪物でしょうね。」

  • かあちゃん好きだと2回。モトさんどう思いました?
  • 妻モト「息子と一緒に大笑い。今頃あんなこと言っても間に合わないよねって。」
  • 藤沢秀行って何ですか。何物ですか?
  • 妻モト「怪物でしょうね。 仕事に対する情熱はすごい。それに向かって一直線。何にも見えなくなってしまう。家族のことなんか頭にないんですよ。もう本望でしょ。幸せな人。最後の最後までみんなに愛されて。」

hidew 2010.01.11 [9]

ライバルに対する深い敬意

http://indai.blog.ocn.ne.jp/osorezan/2010/01/post_abce.html

そして、この勝負を振り返って最後にこう言うのです。
「だから、おしまいなんだ。あれが最後なんだよ、ああいう勝負は。ああいう勝負をね、するのは僕と秀行でオワリなの」
この言葉には「嫌いな」ライバルに対する、根本的な理解と喩えようもなく深い敬意が滲み出ています。

.. 人間の存在の充実は、即人間関係の充実です。そして、その充実とは、単に仲の良いことを言うのではなく、共通の課題や問題に全力で取り組むもの同士の相克の果てに、絞り出されるように生まれてくる僥倖ではないか。

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