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hidew 2009.10.16

#1842 第34期名人戦 - 井山裕太の鮮烈な強さ

「周りが弱いから、強く見える」と勝手に思っていた。

今回の名人戦を観て、井山裕太 のすごさを改めて知ることになる。

対戦相手は張栩名人。日本碁界最強の棋士である。高名な詰碁作家でありヨミが強い。世界でも通用する武闘派だ。

昨年の第33期名人戦 でも同じ組み合わせ(張栩名人VS井山裕太)で、井山裕太は 3-4 にまで肉薄している。しかし、その一勝の違いが大きい。タイトルを取れる人と取れない人の差は、一勝、半目の違いである。昨年の対戦を観て「最後はやはり張栩名人が勝つんだ」と思ったものである。

井山裕太は一年後、再び挑戦者になる。

挑戦者になることはタイトルを防衛するより難しいと言われることもある。連続挑戦というのはそれ自体が偉業だが、井山裕太はそれにとどまらなかった。

井山裕太、囲碁で20歳名人誕生!最年少記録更新 ― スポニチ Sponichi Annex 大阪

囲碁の張栩名人に井山裕太八段が挑戦していた第34期名人戦7番勝負の第5局は14日から静岡県熱海市の「あたみ石亭」で打たれ、15日午後4時48分、176手で井山八段が白番中押し勝ちし、対戦成績4勝1敗で20歳4カ月の最年少名人となった。
井山新名人は「昨年敗れて悔しくて、それを思って1年間戦ってきた。ものすごくうれしい」と初の7大タイトル獲得を喜んだ。

私が一番評価しているのは内容である。とにかく面白い。一手一目何千万円という世界で手が全く萎縮しない。

日本の碁は「戦わずして勝つ」という考えが底流にあって、普段から、守ったり、計算したりが重視される傾向にあるが、井山裕太は剛腕の張栩を相手に延々と戦い続ける。びっくりするようなフリカワリを次々に構想するところはエンターテイナーとしても上手い。もちろん対局相手が張栩だったからこそ面白い戦いになったということもあるだろう。

これだけ派手に打ち回して、最後に勝つというのはなかなか難しい。面白い碁、勝負強い碁を打つ人は珍しくないが、面白く打って結果も残す棋士はなかなか貴重だ。和製李セドルと言ったら褒めすぎだろうか。

盤石と思われた最強者が新世代の旗手にあっさり敗退したという点に関していえば「趙治勲 VS 依田紀基」に近いショックがある。

近年まれに見る鮮烈なタイトル戦だったと思う。

関連

4797671955 わが天才棋士・井山裕太

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<担当編集者からのコメント>
2008年9月12日「大和證券杯ネット囲碁グランドチャンピオン戦」の表彰式が東京大手町で開催された。井山裕太八段が優勝を果たし、その表彰式に出席した。工藤紀夫九段からの挨拶が印象的だった。
「井山裕太くんはまだ19歳、日本囲碁界のホープである。師匠の石井邦生九段は1,000局以上もインターネットを使って鍛えたと聞いています。師匠と弟子が1,000局も稽古するとは前代未聞のことだと思います」。
私はとっさに石井九段に近づき、井山裕太の本を出さないかと提案した。スターの存在なくして、その世界の大きな飛躍はない。囲碁界の発展のためにも、井山八段をスターに持ち上げたいと。石井先生は"日本囲碁界のためなら、お断りできないでしょう"と、快諾された。
集英社らしさを出すためにも、巻末で「ヒカルの碁」原作者と井山八段の対談が実現した。ヒカルの秘密と日本囲碁界の問題点も浮き彫りになったと思う。


4839923310 至高の決断―依田、山下、井山の頭脳 (マイコミ囲碁ブックス) (単行本)

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hidew 2009.10.17 [1]

最年少名人はネット仕込み

asahi.com(朝日新聞社):最年少名人はネット仕込み パソコンで師匠と1000局 - 囲碁

大阪府東大阪市の自宅。会社員の父・裕さん(47)が囲碁を覚えようとテレビゲームの囲碁ソフトで遊んでいたとき、5歳の井山少年が興味を持った。一緒に遊んだら「数カ月で歯が立たなくなった」

囲碁のアマ強豪だった祖父の鐵文さん(78)に碁盤で手ほどきを受け上達。小学1年で、兵庫県宝塚市に住む石井邦生九段の弟子になった。

石井師匠の家が遠かったこともあり、指導は主にネットで受けた。電話回線を通じて自宅でテレビ画面を見て対局し、終局したら電話で指導を聞く。師弟のネット対局は1千局を超えた。

 「ほかの子たちと違ったのは、自分が納得するまで徹底して考える姿勢だった」と石井九段は話す。

2年生のとき、少年少女全国大会の小学生の部で優勝。このころ「世界チャンピオンになりたい」と語っている。

プロ入りが確定したのは小学6年。12歳だった。トップ棋士の多くは中学時代にプロ入りを決めているが、小学校時代に決めた棋士はほとんどいない。石井九段は「10代のうちに(七大)タイトルを取ってほしい」と弟子の前で語った。

「10代のうちに、という師匠の期待には応えられなかったけれど、昨年の経験があってタイトルをとれた。僕も成長できたのだと思います」

hidew 2009.10.18 [2]

20歳の名人 - 囲碁の魅力もっと世界へ(朝日新聞社説)

20歳の名人 - 囲碁の魅力もっと世界へ asahi.com(朝日新聞社):社説

囲碁は古代に大陸から伝わったとされる。「源氏物語」にも登場するし、戦国武将も盛んに打った。江戸時代には幕府に保護され大きく発展した。

近代以降は他国に先駆けてプロ組織の整備が進んだ。日本は長く、囲碁が最も盛んで最も強いと自負してきた。

だが、20年ほど前から韓国、中国に猛追され、いまでは立場が逆転した。
..
「名人」という呼び名は、織田信長が囲碁の上手な僧侶をたたえたことから始まった、という説もある。時代時代で制度は変化したが、第一人者を敬意を込めてそう呼ぶ歴史は数百年に及ぶ。「その名に恥じないように」と語る新名人にも、歴史を受け取り、次代に受け渡す責任感がにじむ。

黒白の石だけで、盤上に無限の可能性を描き出すのが囲碁の魅力だ。それは世界に広がり、時を超えて受け継がれる。若き名人の誕生を機に、改めて囲碁文化の豊かさを見直したい。

(via. http://ameblo.jp/igokyoto/entry-10367488017.html )