#1692 TVドラマ「ハチワンダイバー」総括
通してみると、個々の要素は面白いが、いろいろ詰め込みすぎで、散らかった印象だった。主題と思われるのは下記の2点である。
- プロになれなかった勝負師の悲哀
- プロ資格と棋力(プロとアマのねじれ)
将棋界では瀬川晶司氏が、超法規的な試験によってプロ棋士になった。ハチワンダイバー最後のシーンである。
また、囲碁関係の掲示板では「入段年齢制限」や「棋戦オープン化」の議論が繰り返されてきた。「入段年齢制限の是非」や「既得権としてのプロ資格」を論じると長くなる。
ハチワンダイバーにおいて鬼将会(プロに対抗する真剣師の組織)が投げかけた問いは重い。棋界にとっては重要なテーマである。
重苦しい話の一方で、メイド服の女性が唐突に登場したり、「1分切れ負け」というまともに終局しない持ち時間(昼休みのヘボ将棋でさえ、この設定はない)で将棋を指したりする。
フィクションだからと言って、意味もなくリアリティを否定するのはどうかと思う。持ち時間は逆に8時間以上の設定にして、将棋を知らない視聴者に「ありえへん」と思わせる方が良かった。
メイドは、一見、このドラマの根幹をなすようでいて、実は「綾瀬メソッド 」でしかない。そよ(真剣師)がミルク(メイド)に変身する理由は不明だ。背景説明もなく、唐突に二重人格が出現して、分かりにくい展開である。
澤野弘之の音楽は素晴らしい。(#1685 , #1650 )
映像的にも名場面はあるが、全体的に、CGが過剰で散らかっている。テーマの重さ、ドラマの放送時間などを考えたら、もっと抑えてもよかったのではないか。
第2話「質に入れてしまった退会駒」(#1650 ) の場面は最高だった。プロになれなかった勝負師の悲哀をシンプルなピアノと役者の表情だけで描いている。
他に、師弟、兄妹、親子、男女など、短い時間によく詰め込んだと思うが、どれも急展開にならざるをえなくて、中途半端だった。いろいろつまみ食いをすると、一番重要な主題がぼやけてしまう。寿司と炒飯とカレーライスを同時に盛ったようなもので、総合評価は難しいドラマである。
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