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hidew 2008.06.22

#1670 朝日コラム「死に神」と鳩山法相の奇妙な抗議

朝日新聞夕刊『素粒子』2008-06-18

永世名人 羽生新名人。
勝利目前、極限までの緊張と集中力からか、駒を持つ手が震え出す凄み。
またの名、将棋の神様。

永世死刑執行人 鳩山法相。
「自信と責任」に胸を張り、2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。
またの名、死に神。

永世官製談合人 品川局長。
官僚の、税金による、天下りのためのを繰り返して出世栄達。
またの名、国民軽侮の疫病神。

InvisibleGreen 二段目の「永世-」「死に神」が世間を騒がせている表現だが、風刺、皮肉の範疇である。法務大臣をはじめとする政治家は、何をしても批判される因果な仕事なのだ。それが嫌だからと言って権力者が言論の自由を萎縮させれば、そこに出現するのは中国のような国家である。

朝日コラムの「死に神」表現よりも、鳩山邦夫法相の抗議内容の方が奇妙だ。

東京新聞:「死に神」表現に猛抗議 死刑執行で鳩山法相:社会(TOKYO Web)

これに対して鳩山法相は「極刑を実施するんだから、心境は穏やかでないが、どんなにつらくても社会正義のためにやむを得ないと思ってきた」と語り、「(死刑囚にも)人権も人格もある。司法の慎重な判断、法律の規定があり、苦しんだ揚げ句に執行した。彼らは死に神に連れて行かれたのか」とマイクが置かれた台をたたいて声を荒らげた。

さらに「私に対する侮辱は一向に構わないが、執行された人への侮辱でもあると思う。軽率な文章が世の中を悪くしていると思う」と語った。

YouTube 鳩山法相の会見
http://jp.youtube.com/watch?v=Fa8bAc-wzWk

死刑は、他者の人権を踏みにじった凶悪犯の人権を暴力によって剥奪する行為なのだから、(死刑囚にも)人権も人格もあるというのは矛盾している。人権も人格もある人間を国家が殺したらダメだろう。

執行された人への侮辱という表現が、死刑囚を指すのか、(ボタンを押す)執行人を指すのか、判然としないが、前段とあわせると「(死に神に連れて行かれるとするのは)死刑囚への侮辱」と読めてしまう。意味不明だ。

ffffound 自信と責任をもって死刑執行命令にサインしたはずの鳩山邦夫法相が、100字足らずの「言葉遊び」に対して、狼狽し、支離滅裂なことを言い返してしまう現状が死刑制度の危うさを示している。

私に対する侮辱は一向に構わないならば「死刑執行責任者を死に神と称するなら、それで結構。私には死刑囚を死に導く責任がある」と言っておけば良かったのだ。

鳩山法相には「ベルトコンベアー式で自動的に死刑を執行すべき」(#1589 )と発言した前科があり、「死刑執行の責任を引き受けたくない」という本音がある。そのこと自体は人情として理解できるが、「自信と責任をもってサインした」などと余計なことを言うから、話がややこしくなる。

朝日が『素粒子』で揶揄した対象は、鳩山法相の軽率な言動である。「自信をもって」などと心にもないことを言い、それを茶化した「言葉遊び」に対してキレてしまう。一体どっちが軽率なのかよく考えてみるべきであろう。

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*

玄倉川の岸辺 2008.06.22 [1]

死神の仕事

鳩山法務大臣が朝日新聞のコラムで「死に神」呼ばわりされて激怒したそうだ。

朝日「死に神」報道に法相激怒 「死刑執行された方に対する侮辱」 - MSN産経ニュース
 今月17日に宮崎勤死刑囚(45)ら3人の死刑執行を指示した鳩山邦夫法相を、朝日新聞が18日付夕刊で「死に神」と報道したことについて、鳩山法相は20日の閣議後会見で、「(死刑囚は)犯した犯罪、法の規定によって執行された。死に神に連れていかれたというのは違うと思う。(記事は)執行された方に対する侮辱だと思う」と強く抗議した。

 「死に神」と鳩山法相を表現したのは、18日付朝日新聞夕刊のコラム「素粒子」。約3年の中断を経て死刑執行が再開された平成5年以降の法相の中で、鳩山法相が最も多い13人の死刑執行を行ったことに触れ、「2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神」とした。

 会見で、鳩山法相は「私を死に神と表現することがどれだけ悪影響を与えるか。そういう軽率な文章を平気で載せる態度自身が世の中を悪くしていると思う」と朝日新聞の報道姿勢を批判した。
世間の反応はこうだ。

抗議:朝日コラムの「死に神」に1800件 - 毎日jp(毎日新聞)
 死刑執行の件数をめぐり、朝日新聞夕刊1面のコラム「素粒子」(18日)が、鳩山法相を「死に神」と表現した問題で、朝日新聞社に約1800件の抗議や意見が寄せられていたことが分かった。
世の中にはナイーブな「善人」が多いことが分かる。
ネット世論も「死刑は当たり前、法相を死神よばわりするのはひどい」というのが一般的らしい。

痛いニュース(ノ∀`):朝日新聞「死に神」報道に法相激怒 「死刑執行された方に対する侮辱」
  はてなブックマーク
鳩山法相は、「死に神」なのだろうか - 弁護士川原俊明のブログ
あのー、すいません、普通に「死に神」だと思うんですが... - 女教師ブログ
  はてなブックマーク

なぜこれほど腹を立てる人が多いのか私には分からない。
鳩山法相が怒るのはまだわかる。誰だって死神と呼ばれるのはうれしくない。鳩山氏の支持者が怒るのももっともだ。
だが、見たところ怒ったり抗議したりしている人のほとんどは鳩山氏ではなく死刑制度の名誉(?)を守りたがっている死刑維持派のようである。
刑務官を「死神」呼ばわりしたら私も怒る。彼らは命令を受け義務として

hidew 2008.06.22 [2]

兄弟揃って、珍妙なコメント。

「弟は死に神ではない」民主・鳩山氏、法相を擁護 - MSN産経ニュース

民主党の鳩山由紀夫幹事長は .. 弟の鳩山邦夫法相を朝日新聞が「死に神」と表現したことに関し「弟は死に神ではない。わたしは『死に神の兄』といわれたくはない」と擁護した。

[anonymouse] 2008.06.22 [3]

[キーワード]死神大臣(死に神大臣)

  “死神”がつくキャラクターというと真っ先に思い出すのが天本英世演じる“死神博士”である。  今回、それに匹敵するほどのキャラクターが誕生した。 “死に神大臣”である。 永

Voice of Stone 2008.06.23 [4]

悪魔の辞典「死刑制度・代理出産・臓器移植」

死刑制度
国民およびその代表(法務大臣)が死神になる制度
臓器移植
人肉を部品として使用する医療
代理出産
女性を産む機械として利用
CASA ROSSA 2008.06.24 [5]

「死に神」 鳩山 永世死刑執行人 ( 動画 )

朝日の 「 素粒子 」 でこうほざかれて話題になっているが、私は法相を擁護するつもりはないが、今回の件はチョットかわいそうだと思った。

さら。 2008.06.25 [6]

批判と言葉遊びは次元が違いすぎますね。

日刊ゲンダイだのサイゾーだのならまだしも、大新聞と言われている朝日がこういうことをしちゃいけません。
普段週刊誌の言葉遊びに青筋立てて抗議したり、広告を黒線で塗りつぶしたりしてるじゃないですか。
自分がやられて嫌なことは人にしてはいけません。

まして今回の対象は死刑執行という非常にデリケートな問題です。死刑を望んだ被害者遺族も侮辱対象に入ります。

鳩山は「人権も人格もある犯罪者の命を奪うことには葛藤があるが、社会正義のために法律に則って執行した」と言ってるんですね。
自分がサインすることで死ぬ人がいるのですから、それは悩むでしょうが、大臣の責務として「自信を持って」
ということは大事なことだと思います。
朝日は死刑に反対なら、法律を変えるほどのキャンペーンを張ればいいんです。
居酒屋でグチるような情けないマネを公共の武器を使ってするのなら、大新聞の看板は下ろすべきですね。

hidew 2008.06.26 [7]

偏見、思いこみ

朝日新聞は「ただの新聞」ですし、夕刊コラムの『素粒子』は「居酒屋談義」と同列のものです。ついでに言えば死神は「死に導く」という程度の意味です。

偏見、思いこみが強すぎるんじゃないでしょうか。

法務大臣なら朝日がこういう攻撃を仕掛けてくることぐらい想定していなければなりません。新聞の挑発にうまく対応できない人は大臣なんてやるべきではないでしょう。今回の「死神騒動」は鳩山法相が下手すぎます。

ゆう 2008.07.04 [8]

死穢に係る公僕を差別して喜ぶ卑しい心と被害者遺族感情に想像力が及ばない未熟な考えが悪いのだということを理解しよう。

死穢:死の穢れ、昔は火葬する職業を差別した。精肉業や漁師も差別された。殺生することは仏教的にも神道的にも嫌われた背景があるので、日本文化に根ざした本物の差別である。今回、死刑執行に携わる者を新聞紙上で堂々と差別したことが問題なのである。

江戸時代、死刑や罪人の扱いは被差別階級の職業であった。名残として、警察官を今でも「穢れ役人」などと蔑称する言葉もある。

hidew 2008.07.05 [9]

想像力の欠如はどちらか。

鳩山法相こそ、実際に死刑のスイッチを押す執行人の感情に想像力が及んでいません。誰かに死穢を押しつけておいて「死刑はベルトコンベアのように」「自信をもって執行命令にサインした」などと言ってしまう神経は何かがおかしい。

「朝日の表現に問題がある」ことを強調しても、「(鳩山法相の)自信満々の死刑執行に問題がない」ということにはなりません。

朝日コラムの本意は職業差別などではなく死刑停止・廃止にあります。

**** 2009.09.07

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