#1601 NHKスペシャル - ポアンカレ予想をめぐる人間ドラマ
ポアンカレ予想(1904年)
「単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相といえるか?」
何がなんだかさっぱり分からない。
NHKスペシャル|100年の難問はなぜ解けたのか 〜天才数学者 失踪の謎〜
宇宙に果てはあるのか?宇宙は一体どんな形なのか?
人類が長年、問い続けてきた謎に大きく迫るヒントが去年見つかった。百年もの間、誰も解けなかった数学の難問「ポアンカレ予想」が証明され、宇宙がとりうる複数の形が初めて明らかになったのだ。世紀の難問を解いたのはロシアの数学者グリゴリ・ペレリマン(41)。その功績により、数学界最高の栄誉とされるフィールズ賞の受賞が決まったが、彼は受賞を拒否し、数学の表舞台から消え去ってしまった。.. 「ポアンカレ予想」にはこれまで、幾多の天才たちが魅了され、人生のすべてを賭けて挑み、そして敗れ去ってきた。ペレリマンがその栄誉に背を向け、姿を消したのはなぜか。そもそも数学者はなぜ難問に挑み続けるのか。
アンコール放送 2009-03-09 22:00 - 総合テレビ
世界の天才たちが100年間考え続けた難問だから、1時間足らずの番組で、何かを理解できるはずもないのだが、そこは NHKの番組作りの上手さで、どんどん引き込まれる。
ロケットに長いロープをつけ、自由に宇宙空間を飛び続けた後、地球に戻ったとき、ロープをたぐり寄せ回収する。どんな場合でも全て回収できたとしたら、宇宙はおおむね丸いと言える。
とりあえず「ポアンカレ予想が何を考えようとしていたのか」が分かったような気になった。
(番組ナレーション)
60年代を代表するトポロジーのカリスマ、スティーブン・スメール博士。稀代の天才と謳われた彼はやることなすこと型破りでした。
スメール博士は(ポアンカレ予想を証明するための)ある奇抜な回り道を考えました。
宇宙が三次元空間ではなかったとしたら、どうだろう。もし仮に四次元や五次元の空間だったとしたら。
スメール博士「三次元空間が理解できれば、数学的には十次元の空間だって理解できるのです」
ポカーン。
ジェットコースターの例を出し「二次元では絡まっているけど、三次元では絡まっていない」という説明は分かりやすいのだけど、同じ理屈で四次元、五次元も考えれば、と言われても困ってしまう。
ここでなぜか碁盤の映像がカットインしていた。スメール博士は囲碁が趣味なんだろうか。
高次元空間がどうのこうのという話のところで囲碁が出てくるのは何か意味ありげだ。
そういえば呉清源、王メイエンという高手の解説の中には、しばしば、碁盤を立体視した表現が出てくる。天才棋士の思考もまた二次元ではない高次元の何かをイメージできるのだろう。
結局、ポアンカレ予想を証明して、失踪したペレリマン博士の謎については、ほとんど何も分からず、「関わった人は人生を狂わす」という強引なまとめだった。それだと「ポアンカレの呪い」みたいな話になってしまう。そもそも数学の難問に挑むような人には最初からある種の狂気が備わっているのだと思う。
関連
「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である」という予想であり、1904年にフランスの数学者アンリ・ポアンカレによって提出された。以来ほぼ100年に渡り未解決だったが、2002年から2003年に掛けてロシア人数学者グリゴリー・ペレルマンはこれを証明したとする複数の論文をarXivに掲載した。.. 現在では彼が実際に証明に成功したと考えられている。ペレルマンはこの業績によって2006年のフィールズ賞を受賞した(但し本人は受賞を辞退)。
グリゴリー・ペレルマン(Grigory Yakovlevich Perelman、1966年6月13日 - )はロシア人数学者である。ユダヤ系。元ステクロフ数学研究所数理物理学研究室所属。現在は無職。専門は幾何学・大域解析学・数理物理学。
スティーブン・スメール(Steve Smale,1930年7月15日 - )はアメリカの数学者。専門は微分トポロジー、力学系、数値解析。.. 1966年にフィールズ賞、ヴェブレン賞を受賞。
余談1
ペレリマン博士の幼少期の逸話で「問題を考えているとき、体を揺らす」というものがあった。そういえば羽生善治も、例の大逆転の一局(中川戦 10/14)で激しく揺れていた。関連#1600
余談2
たけしのコマネチ大学数学科 にゲスト出演した数学者は四次元空間をイメージする装置というものを作っていた。