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hidew 2007.02.08

#1520 今野勉『テレビの嘘を見破る』(新潮社新書)

  1. 作り手の作意=工夫の諸例
  2. その他の要旨メモ
  3. まとめ

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=title=テレビの嘘を見破る

  • 今野勉
  • 新潮社
  • 新書
  • ¥735

作り手の作意=工夫の諸例

  1. 母子象のCM - 子象が水中に落下する瞬間、母象が鼻で子象を助け上げる。実際には別々の像の映像を切り貼り。
  2. インタビュー録画 - インタビュアーが頷くシーンはインタビュー終了後に再撮影。(カメラを一台で済ませるため)
  3. ドキュメンタリーのバスの撮影 - 目的地に行く車窓の映像は、実際には撮影終了後の帰路で撮影。
  4. 料理の地方取材 - 1週間かかる薫製の取材を1週間後に再び訪れたように見せて、実は1日で撮影。
  5. 北極グマの撮影 - 北極グマを「撮影するカメラマンを撮影」するシーンは実際には別の場所で改めて撮られた。
  6. 幻の魚釣り紀行 - 初日に釣れた幻の魚を、最終日に釣れたように編集。
  7. 橋から川へ飛び込む通過儀礼を迎えた少年 - 事前に企画された撮影を、たまたま偶然通りがかったように演技。
  8. カワセミの獲物狩り - カワセミが飛び込む決定的瞬間は、カワセミが飛び込む池を作って撮影。
  9. ホスピス病棟で関係性を撮る - 望郷のシーンはディレクターの誘導とナレーションによって演出された。

防腐剤 私は全て許容の範囲内である。予算と時間が限られていれば何か工夫するしかない。

2) はちょっと意外だった。インタビューなんて安い機材を2台使って固定アングルで撮れば良さそうな気がする。

3) 4) は冷静に作り手の立場で考えると分かるが、視聴者の立場ではあっさり見過ごしてしまいそうだ。

その他の要旨メモ

  • 作り手の見る側の共犯関係
  • 感動や面白さの安売り、安買い
  • やらせ、再現、誇張、歪曲、虚偽、捏造
  • 「プロセスの記録」か「典型の記録」か
  • 「あるがままの事実」と「もうひとつの事実」

キーワード

メディア・リテラシー、テレビの文法、
関係性の開示/作品の自立性
禁断の王国ムスタン、田原総一郎、石川好、
華氏911、ガチンコ!ファイトクラブ、川口浩探検隊
進め!電波少年、はじめてのおつかい、

まとめ

「あるある大事典」の捏造はあまりにお粗末で番組そのものは許容できないが、現場の人を責める気にもならない。

某所で話題になっていた「歪曲棒グラフ」も、数学的にはめちゃくちゃだが、テレビの制作現場が切羽詰まっている様子が伝わってくる。

有意なデータ(あるいはインパクトのある映像)が得られなかったときに「失敗でした」「何もありませんでした」と言えない現場の辛さ。自分がそのような立場に置かれたら「あるある捏造」も「棒グラフ歪曲」もやってしまいそうだ。

本書は「テレビの嘘を見破り」つつも、それを生暖かく見守るという立場で書かれている。内情を知れば知るほど嘘に対して寛容にならざるをえないだろう。

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