#1506 佐々木俊尚『グーグル Google』文春新書
それがわれわれにとって薔薇色の夢となるのか、それとも暗黒の悪夢となるのかは、まだだれにもわからない。(p.242)
複眼的な分析によって、Google の光と影を論じた好著である。
Google の 光
Google の「光」の側面について、本書ではあえて、普段はネットに縁がなさそうな事業者を取り上げている。空港駐車場とメッキ工場である。Google が既存のビジネスを破壊し、世界をフラット化した象徴的な意味がこの2つの「プロジェクトX」にある。
Google は ごく一部の大企業を除けば、基本的に称賛される存在である。無料で高性能なサービス、広告は控えめで時々役に立つ。(従来の広告が邪魔な障害物でしかなかったことを考えれば画期的なこと)
Don't be evil をモットーに、ユーザー本位の姿勢を貫いてきた Google であるが、「光」が強くなるにつれ、最近はいくつかの「影」も見られるようになってきた。
Google の 影
- グーグル八分
- アドセンス停止処分
- 中国政府の検閲容認
- 精密航空写真の消去
3 と 4 は国家レベルの圧力が存在する問題(世界で最も evil な 中国政府とアメリカ政府)で、Google の妥協は仕方がない。問題なのは 1 と 2 である。
1. グーグル八分
として騒がれている「悪徳商法マニアックス」の問題は Google が勝手に判断できるような問題だったのだろうか。
明らかに犯罪であると分かるものはともかく、「悪徳商法マニアックス」の件は、裁判所の命令を待つべきだった。この件は「軽い圧力にも屈する Google 」ということを印象づけてしまった。
【関連書籍】
2. アドセンス停止処分
- 些末な問題だが、最も深刻である。技術がウリの Google が「技術的にごまかしている」と言わざるをえない状況だからである。
「アドセンス停止問題」は、Google から何の説明もなく一方的にアドセンス(広告)の契約破棄を突きつけられ、それまで積み上げた広告収入もゼロになってしまうというショッキングな問題である。
実例
404 Blog Not Found:AdSense破棄キター
たけくまメモ: 【驚】Google AdSenseからの契約破棄通知
Googleとの決別 | AdSenseの予告無きアカウント剥奪
ネット上で誰が広告をクリックしたかを同定するのは無理がある。アドセンスで不自然なクリックがあったとしても、それがブログ主によるものか、第三者のイタズラかは区別できないのだ。Google はそこをごまかしているために、クレームに対して、うまく説明できず暴言を浴びせる(p.222)という対応になってしまう。
- 広告代理店(Google)
- 広告主
- 情報提供者(Web制作者、ブロガーなど)
- 閲覧者
広告に関する四者の利害を絶妙にバランスしてきた Google が AdSense に関しては、バランスを欠いている。広告を表示するWeb制作者が冷遇されすぎである。
まとめ
本書のあとがきで書かれている通り、本質は「革新的な文明の恐ろしさ」である。Google はたまたま象徴的な存在であったにすぎない。
「薔薇色の夢か、暗黒の悪夢か」
文明の果てに何があるのだろうか。
関連
NHKスペシャル|グーグル革命の衝撃 〜あなたの人生を“検索”が変える〜
2007年1月21日(日) 午後9時00分〜9時49分 総合テレビ
八年前スタンフォード大学の学生二人が学生寮から立ち上げたベンチャー企業は、今や時価総額18兆円、.. 世界でグーグルが検索される回数は一日10億回、.. 「文明に対し人間が文字を発明して以来の衝撃をもたらしつつある」という指摘もある。
お見逃しなく。
404 Blog Not Found:すべてを一度懐疑していく
むしろGoogle論の本命は、本書だろう。「ウェブ進化論」の読者は、本書も必ず目を通しておくべきだ。 .. 本書は「ウェブ進化論」が明らかにしない、というより梅田氏が「ウェブ進化論」では割愛したGoogleの側面を過不足なく伝えている。
産業技術総合研究所・増井俊之の書評ブログ: 『グーグル Google - 既存のビジネスを破壊する』佐々木 俊尚(文藝春秋)
「Google八分」や中国政府への軟弱な態度の例を見ると、神にしてはかなり脆弱なところが見てとれる。生まれついて最強な神というよりは、気付いたら神になっていた優等生のようなものだから、率先して変なことはしないのかもしれないが、キレイゴトを言う割には高飛車に出たりするしことがあるし、本当にタフな相手には突っ張れないという特徴があるらしい。
いま読むべきGoogle(グーグル)本: ホットコーナーの舞台裏
これらに比べると、.. 「ウェブ進化論」は、所詮、グーグル万歳、シリコンバレー万歳であって、内容も薄っぺらで底が浅い。
佐々木氏の方が深く掘り下げているのはその通りだが、そもそも読者の対象が異なると思う。「ウェブ進化論」は、Google を使ったことがない人にも届くように書かれている。
ある種の「人間味」をバッサリと切り捨てたところにあの会社の凄みと真価があるのも確かですけどね。アドセンス以外のサービスは確かにすごいものだし。
たけくま氏は本文で紹介したとおり、アドセンス停止問題の被害者。
グーグルは、破壊者か、全能の神か : tokuriki.com
躍進する過程のGoogleのポジションは、民衆から搾取することで大金を稼いでいた悪代官から富を奪い既存の秩序を破壊することで、民衆に富を還元している弱きを助け強きをくじく ..
佐々木俊尚『グーグル』、梅田望夫『ウェブ進化論』
Tocotonistの日記(晴れのち快晴) - グーグル Google by 佐々木俊尚
湯川鶴章のIT潮流 powered by ココログ: グーグル、のビジネスを既存のビジネスを破壊する−佐々木俊尚
FIFTH EDITION: 書評「ウェブ進化論」と「グーグル Google」。そしてメディアビジネスの競争構造の変化。
小粋空間: グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する
ガ島通信 - 「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」佐々木俊尚
R30:「グーグル 既存のビジネスを破壊する」
サイバー閑話: 佐々木俊尚『グーグル Google』(文春新書)
佐々木俊尚さんのグーグル本 - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2
ウェブ進化論(梅田望夫・著)/グーグル(佐々木俊尚・著)
1年ほど前、知人に借りて読んで、今手元にないのですが……内容的に重なるところがあり、どちらの本にどの内容が書いてあったか、記憶が曖昧なので、2冊分まとめて感想を述べさせていただきます。
どちらも