#1488 音楽のロングテール
自分の著作物をコントロールして利益を得たいと考える創作者と、できるだけ自由に創作物を利用したい消費者の利害調整を行うのが「著作権法」である。
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0503/29 ..
この図は分かり易い。
今の時代、PVは以前と違って「あとでDVDで発売するかもしれない動画商品」になったが、YouTubeのクオリティの画質で流れることの経済的損失(あの荒い画質のPVをサイト上で見ることでPVを含んだDVD商品を買わなくなったという人がどれだけ増えたか、ということ。俺はほとんどいないと思う)をレコード会社が本気で調べているなんて話は聞いたことがないし、ああいう消費者ニーズに見合った便利なデジタルコピーがもたらすポジティブな効果もはかった上で、あえて「この程度は不問に処す」という選択もゼロではないのではないか。もはやレコード業界だってとっくに護送船団時代じゃなくなってる。生き残りをかけてしたたかな戦略を考えたときに、むやみな権利保護強化しか道がないというのではあまりにも状況が理解できていない。
デジタルコピーがもたらすポジティブな効果もはかった上で、あえて「この程度は不問に処す」という選択
という指摘は重要である。
法的にグレーなコンテンツを一掃するという音楽業界の方針は「微妙に音楽好き」というマジョリティも排除してしまい逆効果になるおそれがある。
もし、YouTube クオリティが高すぎて DVD/CD の売上げがはっきり落ちるのであれば、画質を更に下げることを考えてもいいし、途中にコマーシャルを挟み込むような処置があってもいい。それでもグレーゾーンは維持すべきなのだ。
書物に関しては、「図書館、書店での立ち読みによって本が無料で読めてしまうマイナス」と「本好きを養成したり、書店での衝動買いを促したり、というプラス」のバランスがうまく保たれている。(太っ腹すぎて多少、作家が泣いているのかもしれないが。) ref. #599
音楽CDの試聴は推薦盤を除いて、ほとんどが冒頭の 30 - 45秒に制限されている。冒頭30秒なんて試聴と言えるのだろうか。本当の魅力を伝える前に打ち切ってしまっている。本屋で言えば「全部の本にビニールを被せて、表紙の帯しか読ませない」という態度である。
音楽は他の娯楽に比べて「繰り返し耐性」が高いので、高音質でコピーされない限り、CDの売上げが落ちることはない。レコード会社自ら、フルコーラスの試聴(低音質、広告入り)を用意するくらいのことをしてもいいくらいだ。
YouTube, Winny にイチャモンをつけ、midi も締め上げ、CDの試聴は30秒だけ、こんなことを続けていたら、ベストセラー以外の いわゆるロングテール部の音楽はますます売れなくなってしまうだろう。
ロングテール部が根腐れを起こしたら、結局は全体も衰退してしまう。