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hidew 2006.10.23

#1441 コンピュータ囲碁開発の倫理

人より強いコンピューター囲碁を作ってどうしたいの?
http://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/200610130000/

結論から言えば私は nipparat さんと全く同意見である。

名人より強いコンピュータ囲碁を作ってしまえば、多くの囲碁ファンは今より確実に不幸になる。例えば、ネット対局はソフトの代打ちによるチーティング(不正行為)が増えるだろうし、プロ棋戦を観戦する時に対局者や解説者よりも早く最善手に辿り着くコンピュータがあったら興醒めである。

コンピュータ囲碁の開発者が社会的な影響を考えず、自らの好奇心のために暴走する様は、原爆やクローン人間に手を出してしまうマッド・サイエンティストそのものだ。しかし、一方で囲碁の原理を数式化してアルゴリズムをひねり出すのは最高にエキサイティングな作業なので彼らを止めることは難しいだろう。

コンピュータ囲碁の進歩については、たかがゲーム(パズル)ということで、倫理の埒外に置かれてしまっているのだが、本来は移植医療や代理出産などと同じく慎重に考えなければならない。囲碁ファンの立場でコンピュータ囲碁の進化を喜んでいる人はあまりにも暢気すぎる。

もしコンピュータが名人を超えたら、それは「囲碁の終焉」を意味している。

関連Links

メイエン事件簿(3) 囲碁の終焉
http://taisen.mycom.co.jp/taisen/contents/igo/meien ..

続 囲碁ソフト開発者に警告する
http://plaza.rakuten.co.jp/nipparat/diary/200610220000/

http://blog.goo.ne.jp/kkm3/e ..
http://19-kinou.cocolog-nifty.com/blog/2006/10 ..
http://plaza.rakuten.co.jp/hogehoge0707/diary/200610220000/

マッドサイエンティスト
アーミッシュ

関連記事

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島谷 2006.10.23 [1]

 コンピュータ囲碁が人間を超えるときは必勝法らしきものが見いだせたときだと思います。
 必勝法が発見されても碁の終焉だとは思いません。
 五目並べは必勝法が確立されていますが終焉を迎えていません。
 また必勝法を避けるために連珠が生まれています。
 三山崩しのような必勝法が簡単なものでもパズルとして楽しめます。
 碁の必勝法が確立してもパズルとして楽しめるのではないでしょうか。

Bobby 2006.10.23 [2]

折り良く10月22日付朝日新聞「be on Sunday」に将棋ソフトについての関連記事が。お読みになっているかもしれませんが、念のため、以下はそのさわり。
「ここから先、ソフトが更に上達するには時間がかかる。現状では私がパソコンに負ける姿は想像できない」と渡辺竜王が言えば、ソフト開発者の北陸先端大学の飯田弘之教授は「プロのトップレベルに並ぶのは2012年、その後数年で名人を抜き去る」と予想。
将棋ファンは人間のトップが機会に負ける姿は見たくない。名人がコンピューターに負けた時、将棋は衰退するのか。
第一人者の羽生三冠王は意外に楽観的だ。「勝ち負けだけを争うなら将棋にそれほどの価値はない。思いがけない発想やドラマチックな逆転が郷関と感動を呼ぶ。感動的な俳句が作れないように、コンピューターに人間の共感を得られる将棋は指せません。チェスでも今も人間同士の対局を楽しむファンの数は減っていませんよ」

hidew 2006.10.24 [3]

核兵器の発明に喩えると

論点は「人間をはるかに凌駕する囲碁コンピュータ(事実上の必勝法)の存在をどう考えるか」です。それは好ましいのか、好ましくないのか。

想像力が働きやすいようにもっと現実的な話をしますと、「人類が核兵器を発明したのは、良かったのか、悪かったのか」ということです。島谷さんのツッコミは「核兵器があっても日本は平和に暮らしている。核兵器があっても世界が終わるわけではない」という類のもので、ピントがずれています。

「終焉」という言葉は衝撃が強いと思いますが、それを意図してあえて使いました。本当は「衰微、衰退」という程度のニュアンスです。

hidew 2006.10.24 [4]

朝日新聞「be on Sunday」

朝日新聞「be on Sunday」はネット上で読めるようです。
asahi.com :Wonder in life - be on Sunday

「名人がコンピュータに負けることはない」という類の意見は、現状認識を誤っているか、本質的議論を避けているので傾聴に値しません。

羽生善治プロの意見は少なくとも「万が一プロがコンピュータに負けたとしたら」という前提があり、さすがだと思います。ただ、将棋に「勝ち負けだけではない価値」を見出すことができるのは高いレベルの人だけで、多くのアマチュアは勝敗という結果にこだわりますから、ダメージは避けられないでしょう。

碁盤を囲んで 2006.10.25 [5]

#62囲碁の終焉?

波枕「ようやくというかお待ちしていましたというタイミングでhidewさんが書いてくれましたね、見てみましょうか」>名人より強いコンピュータ囲碁を作ってしまえば、多くの囲碁ファンは今より確実に不幸になる。>例えば、ネット対局はソフトの代打ちによるチーティング...

通りすがり 2008.05.27 [6]

多くの囲碁ファンは今より確実に不幸になる

MoGoの作者は、経済学や数学の世界で開発された理論を応用して
新種のモンテカルロ法(UCT)と言うアルゴリズムを開発したのです。
もちろんそのUCTアルゴリズムも別の分野に持っていって使うことが可能です。
囲碁と言うのはあくまでAI研究の題材であってそれ自身が最終目的ではなく
科学の発展のための通過点でしかありません。

自らの好奇心のために暴走する

そもそもアメリカの原爆はドイツやソビエトにアメリカが占領されるんじゃないかと言う
恐怖から必死になって開発しただけで科学者が人殺しが好きだったわけではありません。
実際に原子力の研究の成果で量子力学が発達しその成果で
あなたのパソコンのCPUや液晶のバックライトのLEDだってできています。
そしてそのコンピューターが車や建物を設計してるんですよ。

難病から人々を助けたいという思いからクローン(というかES細胞)の研究をされている方も
決してマッドサイエンティストなんかじゃありません。
個人を名指していないからといって誹謗中傷してよいわけはないでしょう。
科学的成果を利用するだけして、研究者をバカにしたようなことを言う矛盾した態度は
すぐに改められたほうがいいですよ。

hidew 2008.05.28 [7]

無邪気な科学者

私は理工系ですし、コンピュータ・サイエンスについても、利用者ではなく研究者に近い立場から興味があります。他分野への応用可能性(社会的意義)なども理解していますが、AI研究の題材として囲碁が消費されるというのは、囲碁ファンの立場でいかがなものかと思います。

マッド・サイエンティストを広く定義すると「邪悪な科学者」だけではなく「無邪気な科学者」もそれに該当します。つまり「科学技術の悪い影響を考えない科学者」です。最初から邪悪を目指すのも、結果として災厄を招いてしまうのも同じことです。

文明は元々、矛盾(パラドックス)をはらんでいます。矛盾したものを考えるのに、一面的な答え(=文明の称揚)しか出さないのは「ごまかし」です。

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