#1392 ネット碁会所 棋譜公開の意味
タイゼムで無料会員は棋譜を見られないように制限されている。「幽玄の間」も似たようなシステムらしい。一方で Yahoo Game は最近になって棋譜をメールで送付するというサービスを始めた。
記憶容量1GBあたり100円を切るという時代に、1譜1KB 程度の棋譜を記録してサーバーに置いておくコストというのは 1ユーザあたり1円にもならない。有料のネット碁会所が無料会員に棋譜を見せないのは、単純に有料会員を増やすための戦略であるが、果たしてそれは正しいのだろうか。
私は以下の3点の理由で、無料会員にも棋譜を公開すべきと考える。
- 会員数が多い所に人は集まる。無料会員を増やすことが結局は有料会員を増やすことにもなる。
- 問題行動の多いユーザーをあぶり出して、干物にする。管理コストの低減。自治。自律。自浄。
- 棋譜を自由に使えることでコミュニティが活性化する。プライバシーポリシーの共有。
人が集まる所に人は集まる。 (西村ひろゆき@2ちゃんねる)
碁会所もまず「人を集める」ことが何よりも大事である。「人が多い」ということが碁会所にとって最大のメリットであり、集客力でもある。無料会員を冷遇しすぎて会員数を減らせば、有料会員まで減ってしまうだろう。
棋譜を公開すべき2つめの理由は「問題行動に対する牽制」である。KGS のように全ユーザの棋譜が全世界に向けて公開されてしまうのは秘密主義のユーザーには抵抗があるが、この絶対的な透明性がエスケープや暴言などの強烈な抑止力になる。問題行動を起こすとその証拠が全世界に公開されるため、結局はハンドルを変えざるを得なくなる。
3つ目の理由。閉じたコミュニティから開かれたコミュニティに棋譜を転載するときは、相手への配慮(著作権ではなくプライバシーの点で)が必要であるが、ブログで記事を書くのにいちいち対戦相手の許諾が必要になれば非常に面倒である。サーバーが最初から棋譜をオープンにしていると、そういう細かいことを気にする必要が一切なくなるのだ。KGS の棋譜はフルオープンなので、インターネット上で使用する限り、プライバシーポリシーの段差が発生しない。
#数年前、WING-ML で棋譜の取り扱いについての議論があって、紛糾したように記憶している。
有料会員と無料会員の差別化は当然必要だろうけど、他の選択肢(KGS, WING, Yahoo)を持っているユーザから見れば、棋譜の閲覧制限はただ「セコい」という印象しかない。有料会員の価値を上げるのではなく、無料会員の価値を下げるという方向で差別化するのは、無料会員の気分を害するだけで有料会員を増やすことには寄与しないだろう。